X線・ガンマ線イメージング
XCam-CdTe

XCam-CdTeは、イメージングセンサーとして高性能テルル化カドミウム(CdTe)半導体を採用し、独自のタングステンコリメーターを組み合わせることで世界最高レベルの高解像度·高感度を実現した前臨床研究用のX線·ガンマ線イメージングシステムです。

治療用放射性同位元素および化合物等の体内動態イメージングに最適です。

X線・ガンマ線イメージング XCam-CdTe

iMAGINE-X社は、世界最高レベルの高解像度·高感度イメージング装置を医療をはじめとする幅広い産業に提供しています。

iMAGINE-X社は、世界の最先端でブラックホールや超新星残骸を探求してきた宇宙物理学の研究者が中心となり、2019年に設立された東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)発のスタートアップ企業です。

宇宙物理学では、人工衛星に搭載するセンサーを研究者が中心となって開発し、宇宙からのX線やガンマ線をキャッチし、そして高度な解析により初めてイメージングが実現します。そのような、宇宙を通じて長年培ってきたイメージング技術は、これまで各産業分野で使われてきたイメージング技術を圧倒的に凌駕できる可能性を秘めています。

iMAGINE-X社は、2019年の設立元年以降、宇宙観測、加速器実験、非破壊検査用に、受注生産型のイメージングデバイスを提供しており、量産モデル第一弾として、創薬研究で社会に貢献するために、マウスの全身を対象に薬物動態イメージングが可能な装置XCam-CdTeを2022年にリリースしました。

イメージングシステムを創造する

iMAGINE-X社の強みは、X線·ガンマ線のイメージングシステムを実現するために必要な、(1)アナログASICの設計、(2)センサーモジュール開発、(3)光学系の設計、(4)画像化のためのデータ解析技術という、コア技術をフルセットで保有していることにあります。

これによって、自社でオンリーワンのイメージングシステムを、ゼロベースから作り上げる開発力を有しています。また、クライアントのリクエストに応じて、イメージングシステムのデザイン検討や、ASICやセンサー等の要素技術の共同開発にも積極的に取り組んでいます。

高解像度·高感度イメージング装置

iMAGINE-X社は、メディカルイメージングや非破壊検査向けの、カスタマイズ検出器を提供しています。

また、At-211、Ac-225などの治療用放射性同位元素を用いた前臨床研究における薬物動態イメージングの需要の高まりを受け、2022年にXCam-CdTeをリリースしました。

特長

  • 10–200 keV対応: 硬X線から一部ガンマ線までを高感度イメージング
  • マルチ核種検出: α線治療*核種やSPECT核種を高分解能で同時測定
  • 高性能2.5%@122keV: 複数核種を鮮明に識別
  • 独自タングステンコリメーター: 短時間で高感度な測定可能
  • コンパクト&可搬: 場所を選ばず設置・移動が容易
  • セラノスティクス対応: 放射線治療とイメージングを組み合わせた応用が可能

* α(アルファ)線治療とは、放射性同位元素が放出するエネルギーを応用したがん治療法です。従来のX線・γ線・β線治療と比べ、α線は組織内での飛程が非常に短く、その一方で高い線エネルギー付与(Linear Energy Transfer: LET)を持つことが特長です。このため周囲の正常組織への影響を抑えつつ、がん細胞に対して強力な効果を発揮できる次世代の治療法として注目されています。

1定量性

マウスに移植したがんや、臓器に蓄積した放射性同位元素由来のシグナルを定量化するためには、バックグラウンドシグナルを区別し、除去する必要があります。

CdTe半導体の優れたエネルギー分解能により、ノイズを除去して定量性の高い画像を取得できるため、画像を基にした線量測定などのアプリケーションに最適です。

2動的イメージング

金属3Dプリンター技術で製作した高効率のタングステン製コリメーターにより、画像化に必要な光子を短時間で収集できるため、薬物動態の動的イメージングに強みを発揮します。

3複数核種イメージング

現在商用化されているハイグレードなCZT(カドミウム亜鉛テルル化合物)半導体を用いたシステムに比べ、約2倍の優れたエネルギー分解能を持つため、複数核種イメージングに適しています。

例えばTc-99m(140keV)/I-123(159keV)やLu-177(113keV)/At-211(76-92keV)など、放出される光子のエネルギーが近い放射性同位元素を組み合わせたケースで大幅な画質の向上が期待できます。

4簡単操作とコンパクトサイズ

マウスをイメージングシステムの上に置き、付属ソフトの簡単操作で、データの収集がスタートし、放射性同位元素の分布が画像化されます。

本体サイズは、25cm×20cm×15cmという、非常にコンパクトサイズを実現しています。

5独自のCdTe検出器

広視野、高エネルギー分解能、高空間分解能
少ない読み出しチャンネルと消費電力で大きな有効面積(32x32mm2)を実現するために、ピクセル型のセンサーの代わりに、両面CdTeストリップ検出器(CdTe-DSD)を開発。

アノードとカソードの両方の信号を用いる特殊なアルゴリズムにより、XCam-CdTeで使用されている厚い(2mm)検出器であっても、122keVで2.5%(FWHM)という高いエネルギー分解能を実現。

検出器の位置分解能は250μmで、コリメーターの穴サイズよりも十分に小さく、優れた空間分解能に寄与しています。本製品では、2つの検出器を並べることでマウスの全身をカバーする広視野を実現しています。

テルル化カドミウム(CdTe)センサーモジュール

テルル化カドミウム(CdTe)センサーモジュール

6独自のタングステンコリメーター

金属3Dプリンター技術により実現した高効率な純タングステンのコリメーター
最新の金属3Dプリンター技術により、最適な純タンステンのコリメーターの「印刷」を実現。コリメーターは用途に応じて既存のリメーターへの変更や、新規に新規開発に対応することも可能です。

コリメーターファミリー

高感度コリメーター(High Efficiency)
At-211(76-92keV)、Ac-225(70-100keV)などの重たい放射性同位元素から放出される高エネルギーX線、あるいはIn-111(23.2keV)、I-125(27.5keV)などの低エネルギーX線を対象とした10-100keV 帯のイメージングに最適なコリメーターです。臨床イメージングで使用される一般的なコリメーターと比較して、約5倍のコリメーター効率を有します。

多目的コリメーター(All Purpose)
10-200keV帯のX線やガンマ線を放出する様々な放射性同位元素に対応したコリメーターです。高感度コリメーターに比べてコリメーター効率は下がりますが、In-111(171keV)、Lu-177(113、208keV)、Tc-99m(140keV)、I-123(159keV)などの放射性同位元素を画像化できます。

符号化マスク(Coded Aperture)
リクエストに応じて符号化マスクコリメーターの製作も可能です。

3Dプリンター製タングテンコリメーター

3Dプリンター タングステン コリメーター

仕様詳細

高感度コリメーターを使用したケース

イメージング帯域 10-100keV
空間分解能 1.5mm(最大)
感度 770cps/MBq(I-125:20-38keVエネルギー幅)
260cps/MBq(At-211:75-95keVエネルギー幅)

視野 40×80mm(マウスの全身撮像が可能)
エネルギー分解能 2.5%(FWHM)@122keV

多目的コリメーターを使用したケース

イメージング帯域 10-200keV
空間分解能 1.5mm(最大)
感度 150cps/MBq(I-125:20-38keVエネルギー幅)
50cps/MBq(At-211:75-95keVエネルギー幅)
100cps/MBq(Tc-99m:135-145keVエネルギー幅)
視野 40×80mm(マウスの全身撮像が可能)
エネルギー分解能 2.5%(FWHM)@122keV

対象核種

XCam-CdTeは、10keVから200keVのエネルギー範囲(硬X線からガンマ線)における高感度イメージングに特化した装置で、このエネルギー帯域において高感度·高精度にイメージングすることが可能です。

アルファ線放出核種に伴って発生する特性X線のイメージングに加え、SPECで広く用いられるテクネチウムなどのガンマ線核種の一部も測定可能です。

元素名 質量数 主なγ線エネルギー
(keV)
XCam-CdTe
高感度コリメーター*
XCam-CdTe
多目的コリメーター*
テクネチウム(Tc) 99 140 ×
インジウム(In) 111 171/(245) ×
ヨウ素(I) 123 27.5
ヨウ素(I) 125 159 ×
ルテチウム(Lu) 177 113/208 ×
アスタチン(At) 211 76–92
アクチニウム(Ac) 225 77–100

*コリメーターの詳細は、仕様詳細を参照ください。

測定事例

マウス体内における薬剤の分布は時間とともに変化しますが、At-211(半減期7.2時間)のような治療用放射性同位元素は短時間で放射能が弱くなるため、従来の技術では追跡が困難でした。

右図は、担がんマウスに投与したAt-211薬剤候補の分布を表しています。XCam-CdTeにより、投与から21時間後でも30分程度の測定で、腫瘍内へのAt-211の蓄積(赤矢印)を検出しています。

腫瘍内の放射能は3時間後の18.8kBqから21時間後には1.4kBqへ減少しており、腫瘍に付与した線量を推定することが可能になりました。

担がんマウスにおけるAt-211の分布。赤矢印が腫瘍

担がんマウスにおけるAt-211の分布。赤矢印が腫瘍。

複数の核種(Tc-99m、In-111、I-125)の3D同時可視化。
Tc-99mを赤、In-111を緑、I-125をシアンで表示。
(Takeda et al., IEEE TRPMS, 2023)

YouTube動画 ※3Dモデルは現在開発中