マウス尾静脈自動注射システム
AUTiv™

マウス尾静脈に無麻酔下で注射器による薬液投与が可能な、世界初の尾静脈自動注射システムです。簡単な操作で1匹あたりおよそ3分程度でマウスの保定から投与まで完了することが出来ます。

※AUTiv™は、auto(⾃動)と、iv(静脈注射:intravenous injection)を基に命名しています。
※AUTiv™(オーティヴ)は、弊社の登録商標です。

マウスの尾静脈への薬液投与は、動物実験における重要な手技の一つですが、わずか0.3mm程度の尾静脈に、同程度の太さの注射針を正確に穿刺する必要があり、習得には高度な技術と相当数のトレーニングが求められます。さらに、実験期間中は熟練したテクニシャンの常駐が必要となるなど、高い技術的ハードルが伴う手法でした。

AUTiv™は、この課題を解決するために開発された、世界初の無麻酔下でのマウス尾静脈への自動薬液投与装置で、2024年5月に正式に国内販売を開始いたしました。

本装置は、株式会社Preferred Networksが開発し、当社が製造・販売に関するライセンスを受け、株式会社夏目製作所に製造を委託しています。

3社が協力し、動物実験の精度向上に加え、3Rs(Replacement, Reduction, Refinement)のうちReduction(削減)およびRefinement(改善)を推進し、さらに動物実験従事者の負担軽減にも貢献できるよう、開発・改良を進めてまいります。

AUTiv™ 紹介動画(日本語)

AUTiv™ introduction movie(English)

特長

  • 無麻酔下でマウス尾静脈に装置が自動で穿刺
  • 指定の速度で薬液を注入可能
  • 1回の穿刺にかかる時間は約3分
  • 正確な穿刺を実現する5軸可動型シリンジユニット
  • 尾の保定を容易にする専用設計のマウス保定器
  • 簡単操作の自動キャリブレーション機能搭載
  • タッチパネルによる簡単操作
  • 穿刺時の設定パラメータや動画の自動保存
  • 直感的に使える専用UIを搭載。日本語・英語の切替も可能
  • 軽量コンパクトな本体。カートに載せて持ち運び可能

※ケージからマウスを取り出し、AUTiv™で穿刺終了後に戻すまでの平均的な時間。熟練度や操作方法によっては、より長い時間が必要な場合もあります。

機能

マウスホルダ

専用設計のマウスホルダ※1は、不慣れな実験者でもケージ内でマウスをホルダ内に容易に入れることが可能で、逸走させてしまうリスクを最小限に抑えることができます。また頭部を押さえる必要がない構造※2のため、従来の保定器よりもマウスのストレスを軽減させることが可能です。

※1 逸脱防止用の頭部キャップは使用/不使用が選択可能
※2 マウスのサイズにより、Sサイズ・Lサイズの2種類から選択可能

マウスホルダ Lサイズ

写真上は、Sサイズ。
下はLサイズ。

マウスホルダの固定

マウスホルダを、AUTiv™本体の固定台に取り付け、尾を固定します。

深層学習を用いた画像認識技術

AUTiv™に搭載された2台の4Kステレオカメラは、人間の眼と同様に2方向から捉えることで、尾静脈を3次元的に把握し、正確に位置を認識します。

固定台の下からはLEDライトを照射することで尾静脈を浮かび上がらせ、撮影された画像をもとに静脈検出器が尾静脈の位置を特定します。この静脈検出器の開発には深層学習技術を活用しており、従来の手法では誤検出が発生していた個体や、尾に水滴やゴミが付着しているケースでも、尾静脈を正確かつ安定的に検出できます。

認識した尾静脈の位置は、側面図に高さ(Z軸)/前後(X軸)として表示され、タッチパネル上でリアルタイムに確認することが可能です。

深層学習を用いた画像認識技術

位置決め制御技術

薬液を充填したシリンジは、5軸ステージにベベル面が真上となるように取り付けます。AUTiv™の針先位置決め精度は約 0.021mmと高精度であり、この精度を維持するために2種類のキャリブレーション機能を実装しています。

  • 1stキャリブレーション(装置の初期設置時や移動させた場合等)
    1. 約1分間の自動診断を実施し、キャリブレーションの必要性を判定
    2. 必要と判定された場合には、約8分間のキャリブレーションを実施

  • 2ndキャリブレーション(通常使用時)
    1. 注射器を5軸ステージに取り付けるたびに、自動で約1秒間のキャリブレーションを実施

この2種類のキャリブレーション機能により、注射器自体の製造誤差にも対応が可能となり、「精度」と「使い勝手」との両立を実現しています。

位置決め制御技術

パラメータ設定

AUTiv™は、以下のパラメータを設定することが可能です。

  • 投与パラメータ:薬液注入速度、逆血確認動作時間
  • 穿刺パラメータ:穿刺開始位置、穿刺距離、穿刺速度

これらのパラメータに基づき、穿刺後に逆血確認を行い、針先が尾静脈内に確実に入っていることを確認したうえで、設定された薬液注入速度(最長44秒/100μL)で投与を実施します。

パラメータ設定

個体差に応じた最適化:
系統や性別(オス/メス)によっても最適な穿刺位置が異なるため、適切なパラメータ設定が必要です。パラメータが未設定の系統では、初回の穿刺成功率が低いためお客様ご自身で最適なパラメータを探索する必要があります。

対応済み系統:
ICR、C57BL/6、BALB/c、BALB/c nu/nu、NOG

評価試験結果(開発・製造元による)(ICR・C57BL/6のみ)

  • 穿刺成功率:80%以上
  • 投与成功率(同一個体に対し3回以内に成功):100%

力制御技術

5軸ステージに設けられた押子ホルダは、力制御機能を備え注射針付シリンジの押子を操作します。パラメータ設定に基づき、押子を牽引して逆血を確認したり、設定通りの速度で薬液を投与することが可能です。

逆血確認動作

  • 注射針が穿刺された位置から設定された距離を牽引し、逆血を確認します。

薬液注入の安全機能

  • 制限された電流値を利用して押子を制御
  • 注入時に許容以上の力が必要になった場合自動停止し、それ以降の薬液注入を自動中断
力制御技術

この機能により、誤って組織内に薬液を注入し血管が見えなくなるリスクを軽減できます。逆血を確認し、マウスが動かない状態であれば、高い成功率で投与を実施できます。

※血管外に針が刺さった場合など

仕様

ハードウェア

内蔵PC CPU: Intel® Core™ i9、Memory: 16GB、SSD: 1TB
モニタ タッチパネルディスプレイ(13.3型Full HD)
電源 AC100~240V, 5A, 50/60Hz
寸法 W455 × D410 × H525(㎜)
重量 30kg

穿刺対象系統

  • ICRマウス
  • C57BL/6(B6)マウス
  • BALB/cマウス

※上記系統の尾静脈の画像を基に、深層学習技術を用いて「静脈検出器」を開発しております。対象系統への穿刺精度を100%保証するものではありません。

使用可能注射器

  • テルモ マイジェクター注射針付シリンジインスリン用(1mL)
    • 27G(SS-10M2713(A))、29G(SS-10M2913(A))

投与量

  • 自動最大投与 0.3mL
  • 手動最大投与 1.0mL